あらすじ

始めは、それはそこにはなかった。ただ廃祠があって、人の噂があっただけだった。 混沌へ続く森の中の廃祠へ祈りを捧げれば、どんな願いでも叶えると。 そんな噂が王国の辺境の村、混沌との境目で囁かれていた。 勇気だけある青年は騎士になりたくて祈りをささげに村を出たが、帰ってこなかった。王都で光り輝く騎士生活を送っているのかもしれない。 心優しい男の子は母親の病を治したくて、祠を探しに出かけて、帰ってこない。しかし高名な薬師が村を訪れて母親を治した。男の子の祈りのおかげなのかもしれない。 飢饉を憂いで祠を探しに出た村長娘は、一枚のハンカチだけを森の入口に残し、二度と姿を現さなかった。でも翌年、村は豊作になった。村長娘の祈りが届いたからに違いない。 悪徳な貴族に言い寄られ婚姻を迫れた女性が、愛する幼馴染と幸せに暮らすために二人で森へ祈りをささげに行って姿を消したままだった。数ヶ月後にその貴族の悪事が暴かれ、一族郎党処刑された。二人の祈りの成果なのかもしれない。 人々は、廃祠の噂をますます信じるようになった。 噂をする人々は誰も、まだ本当の廃祠を目にしたことがなく、もちろん祈りなど捧げていないという事実を知らない。彼らはみな、頭ではそんなものがあるわけないとわかっていながらも、何でも叶えてくれる祠があると噂し合う。

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小説を読もう2026/09/15
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