あらすじ
前の客のカゴが、パンパンだった。
動いているレジは一台だけ。
ピッ――550円。
ピッ――1100円。
ピッ――2300円。
すいません、細かいのありました。
すいません、ポイントカードありました。
あっ、五百円の商品券もありました。
あっ、これとこれはキャンセルで――
そしてレシートの両端はピンクに染まり――切れた。
――同時に俺の中で、何かが弾けた。
気づけば髪は逆立ち、全身から赤黒いオーラが立ち上っていた。
目の前に現れたのは、口の悪い妖精・ディオ・ローラ。
なんでも俺は「怒りのトリガー」とやらを引ける人間らしく、
怒りが限界を超えると、戦闘値が普段の十倍以上に跳ね上がるのだという。
そして彼女は言った。
「んで、来週フェアグラが開催される。アンタが代理人な」
「いや、むり」
「もう登録した」
妖精が人間の代理人を立てて争う最強決定戦、フェアリー・グランプリ。
優勝すれば賞金と、代理人を立てた妖精のランクが一つ上がるらしい。
断りたい。心の底から断りたい。
明日も普通に出勤だし、有給は三日しか残っていない。
これは、しょうもない理由でキレた三十路手前の社会人が、
しょうもない理由でキレながら、なぜか世界最強を目指すことになる話。