あらすじ

「お姉様のお名前なんて、書き写せばよろしいでしょう?」

妹がわたくしの婚約と、金庫の鍵を持っていったとき、父は譲渡の書面にご署名なさり、母は妹の髪を撫でておりました。この十年、この家でわたくしの名を呼んだ人はおりません。「お前は強い子だから」と、それだけは何度も言われましたけれど。

ですから、惜しくはございません。屋敷も、婚約も、家督も、すべて差し上げます。

ただひとつだけ、お渡しできないものがございます。

——信用でございます。

十七の年から、仕入れの支払いはすべてわたくしが立ててまいりました。春の麦も、夏の鉄も、冬の炭も。商会が三月お代を待ってくださるのは、コルビエ伯爵家に対してではなく、わたくしの署名に対してでございます。

譲れと仰るなら、いくらでもお譲りいたしますわ。
けれど信用は、こちらから差し上げるものではございません。向こう様がお決めになるものでございますから。

来月の仕入れから、現金でお支払いくださいませ。

※初日以降は毎日12時・22時に更新します。

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アルファポリス
アルファポリス2026/09/14
  • 現在の作品妹に何もかもお譲りいたします。ただ、商会がお代を待ってくださるのはわたくしの署名にでございますので、来月から現金でお支払いくださいませ