あらすじ

「おまえを愛したことは、一度もない」

星の見えない夜、殿下はそう仰って、わたくしとの婚約を破棄なさいました。

よろしくてよ。ではわたくしも、ひとつだけ始末をいたします。

街外れの魔術師の店。売れるのは、記憶。売ったのは「殿下を愛した記憶」――それだけ。家の名も、礼儀も、帳簿の読み方も、わたくしはひとつも失っておりません。

翌朝から、不思議なことが起こります。

婚約を破棄したはずの殿下が、毎日わたくしの前に現れるのです。「あれは、おまえを守るための嘘だった」と。

けれど、わたくしにはその言葉を信じるための記憶がございません。信じたい気持ちも、疑う理由も、どちらも売ってしまいましたので。

そして王妃さまは、わたくしが「あの夜に見たもの」を覚えていないと、なぜかご存じでした。

嘘は、覚えていない者には効きませんの。

これは、記憶を置いてきた令嬢が、もう一度、自分の手で覚え直す話です。

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アルファポリス
アルファポリス2026/09/14
  • 現在の作品殿下の嘘は、もう効きません。婚約破棄の夜に恋の記憶を売りました