あらすじ
二十年前、海に沈んだ故郷。
命日の夜、海が異常に引き、海底に消えたはずの町が「現在形」で姿を現した。
三十七歳の坂井理沙がそこで出会ったのは、十二歳で失った弟・悠斗――四十歳。
彼には妻と十四歳の娘がいて、その町では事故から二十八年が流れていた。
海は夜明けに戻る。
「今度こそ弟を連れて帰る」と決める理沙に、悠斗は言う。
「俺、助け待ってたわけじゃないよ」
救うとは、失った二十年を取り戻すことなのか。
それとも、彼が生きた二十八年を奪うことなのか。
一夜だけ重なった二つの時間で、家族それぞれが「帰る場所」を選ぶ現代ファンタジー。