あらすじ

アルディエ伯爵家の双子の妹リゼットには、名前がない。 戸籍の上では「病弱で領地療養中」。その実態は、聖女と名高い姉エステルの影武者だ。髪を姉の色に染め、姉の声で笑い、姉として夜会に立つ。――聖女の奇跡の本当の出どころが、自分であることも隠したまま。 「これは姉さまの力。私は借りているだけ」 そう思い込まされて育った娘は、今日も完璧に姉を演じる。誰にも見抜けない。両親にも、社交界にも、当の姉にさえ。 ただ一人、「氷の王太子」セドリック殿下を除いて。 「はじめまして、と言うべきかな。君は、彼女じゃない」 初対面の茶会、一杯の果実水で彼女の正体に気づいた王太子は、暴く代わりに奇妙な決め事を己に課す。一、名前を確かめること。二、本人に、本人の名で名乗らせること。三、それまで、何も暴かないこと。 誰にも気づかれない我慢に気づいてくれる人がいる。名前を訊いてくれる人がいる。 影として生きてきた娘が、自分の名前で立つ日まで――。

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小説を読もう2026/09/14
  • 現在の作品双子の姉の影武者として生きてきましたが、王太子殿下だけは一目で私を見抜きました