あらすじ
クラスでは普通に笑っている。
LINEも毎日来る。
成績だって、特別悪いわけじゃない。
家に帰れば、「おかえり」と言ってくれる家族もいる。
なのに、どうしてこんなに息苦しいんだろう。
***
中学三年生。
俺たちのクラス、三年三組は、学年で一番の「当たりクラス」だった。
明るい。
仲がいい。
問題児もいない。
先生からの評判もいい。
運動会では一丸になり、行事にも全力。
他のクラスからは、
「三組っていいよな」
「当たりじゃん」
なんて言われていた。
――でも。
この教室にいる三十人は、誰一人として「悩みがない」わけじゃなかった。
受験が怖い。
成績が怖い。
部活の最後の大会が怖い。
好きな人に嫌われるのが怖い。
友達のグループから外れるのが怖い。
親の期待に応えられないのが怖い。
自分の身体が変わっていくのが怖い。
SNSで誰かと比べてしまう。
将来、何になりたいのか分からない。
家に帰りたくない。
誰かに必要とされたい。
――ただ、「普通」でいたい。
誰かにとっては小さな悩みでも。
本人にとっては、それが世界のすべてだった。
そして、そんな三十人の一年間が始まる。
進級式。
運動会。
夏休み。
恋愛。
部活。
勉強。
文化祭。
何気ない放課後。
くだらないLINE。
そして――合唱コンクール。
「みんなで頑張ろう」
その一言をきっかけに、少しずつ何かが壊れていく。
仲がいいと思っていた。
分かり合えていると思っていた。
でも、本当は。
俺たちは、お互いのことを何も知らなかった。
だから、一度壊れる。
そして、そこから始まる。
「仲良くする」ためじゃない。
「最高のクラス」を作るためでもない。
ただ、
自分とは違う誰かを、少しだけ分かろうとするために。
合唱コンクールの結果なんて、金賞じゃなくていい。
最下位だっていい。
ただ、この一年を、
「最悪だった」
で終わらせたくない。
これは、特別な才能を持った誰かの物語じゃない。
どこにでもいる中学生たちの、
笑って。
傷ついて。
誰かを好きになって。
誰かを嫌いになって。
自分が嫌になって。
それでも、もう一度誰かの隣に立つ――
中学最後の一年間の物語。
そして一年後。
卒業式を終えた俺たちは、
最後にもう一度だけ、三十人全員で遊びに行く。
もうすぐ、この教室を出る。
それぞれ別の高校へ行く。
二度と会わない奴だっているかもしれない。
だからこれは、
三十人が「三年三組」だった、一年間の記録。