あらすじ
彼女たちは、お互いに名前を知らない。
都内のM性感店で働く女たち。
店では源氏名で呼ばれ、客からも、スタッフからも、本名を聞かれることはない。
年齢も、経歴も、この仕事を始めた理由も違う。
生活のために働く者がいる。
この仕事が好きな者もいる。
割り切っているつもりの者もいれば、割り切れないものを抱えている者もいる。
同じ店に所属していても、彼女たちは友人ではない。
家族でもない。
仕事が終われば、それぞれ別の生活へ帰っていく。
それでも、待機室ではくだらない話をし、客の愚痴を言い、笑い、ときには誰かの異変に気づく。
源氏名しか知らない女たちが、同じ場所で働く。
これは風俗を舞台にした物語である。
けれど、描きたいのは性そのものではない。
名前すら知らない人間同士が、仕事という場所でどこまで他人に近づけるのか。
そんな、少し変わった職場の話。