あらすじ
『夏休み、貸します』
二十八歳の会社員・俺は、仕事に疲れ、夏休みを利用して故郷へ帰ってきた。
そこで見つけたのは、子供のころに書いた「なつやすみ」のノート。
そこには、未来の自分へ向けて、
「つかれたら、なつやすみをつかっていいよ」
と書かれていた。
その直後、俺の前に現れたのは、八歳のころの自分だった。
「お兄ちゃん、夏休み、貸して」
その言葉をきっかけに、俺は子供の自分から「夏休みの一日」を借り、忘れていた夏の日々をもう一度過ごすことになる。
けれど、借りれば借りるほど、八歳の自分の夏休みは少なくなっていく。
やがて俺は気づく。
自分が借りていたのは、ただの時間じゃない。
それは、疲れた大人になった自分に、子供のころの自分がくれた「もう一度、生きるための時間」だった。
最後の夏休みを前に、俺は決断する。
今度は、自分が子供のころの自分へ――夏休みを返す。
大人になっても、夏休みは終わらない。
自分で「休んでいい」と思えたとき、もう一度、夏は始まる。