あらすじ
就活ですれ違った、他大学の可愛いあの子。
面接が終われば、名前も知らないまま二度と会わない。
――もし、あの日。声をかけていたら?
情報工学とメカトロニクスを学ぶ大学生、**深町英嗣**は就職活動に苦戦していた。
本当は大学院へ進み、技術者として研究を続けたかった。
けれど、将来の結婚を考えていた恋人に望まれたのは、大企業への就職。
笑顔を作った。
履歴書を盛った。
興味もない企業に「第一志望です」と言った。
それでも、落ちた。
ある大企業のグループ面接で一緒になったのは、妙に印象に残る三人の女子大生。
美術の世界に絶望し、一般就職へ逃げてきた美大生、**久世羅綺亜**。
ピアニストとして高い実力を持ちながら、音楽で生きる道を諦めかけている音大生、**宵川美弦**。
役者としてはすでにドラマ出演歴まであるのに、小説と戯曲という売れない沼から出ようとしない文学少女、**古原未文**。
面接が終われば、それだけだった。
ところが英嗣は、その日の不採用を恋人に報告し――その場で振られる。
大学院を諦めた理由も。
就活を頑張っていた理由も。
突然、全部なくなった。
帰り道、英嗣は今日のグループ面接にいた三人を見つける。
普段なら、そのまますれ違っていた。
でも今日は、一人で帰りたくなかった。
「……なあ。このあと、飲みに行かない?」
聞けば、三人も仲良く全員不採用。
酒が進む。
愚痴が出る。
そして、捨てようとしていた夢まで出てくる。
「私、本当は絵を描いていたい」
「私は音楽」
「……小説と、戯曲」
英嗣は三人を見る。
美術。
音楽。
文学。
そして、自分には情報工学とメカトロニクスがある。
酔っ払った頭の中で、何かがおかしな形に接続された。
「……俺たち、ゲーム作れるんじゃね?」
「は?」
「久世が描く。宵川が音楽作る。古原が書く。俺が動かす」
「ちょっと待って」
「Unreal Engine使おうぜ」
「待ってって」
そして英嗣は、今日一番偉そうだった人事のおっさんの顔を思い出す。
「ゲーム売ってさ――あいつらより稼いでやろうぜ!」
酒の席の馬鹿話。
翌朝になれば、全員忘れているはずだった。
――忘れていなかった。
こうして四人の就活敗残兵は、英嗣が暮らす事故物件のガレージに集まり、本当にゲームを作り始める。
誰にも採用されなかった四人が、自分たちで自分たちを採用した。
これは、就活ですれ違えばそれきりだった四人が、たった一度声をかけたことで始まる――世界を相手にゲームを売るまでの青春の話。