あらすじ
僕――柚月(ゆずき)は馬鹿かクズかと問われたら……迷わず、両方だと答える。それはもう、胸を張り堂々とした顔で言ってみせよう。
別にそんな罵られることに、快感を覚えるような奇怪な性癖は、残念ながら持ち合わせていないが……他人に批評される以前に、自認が馬鹿でクズなので仕方がない。性格がクソ野郎だと自覚がない人間や、聖人ぶっている偽善者よりは、僕のほうがマシだろう。
そんな救いようの無い僕は、高校に入学をして、一人の女生徒と出会った。名前は琴葉(コトハ)。始めて顔を合わせたのは、入学式の日……その放課後だった。校内を適当に探索していた僕は、旧校舎の裏手に生えた桜の木の側で琴葉を見つけた。普段、人前で猫を被って生きている性格が共鳴したのか、僕たちは放課後の空いた時間に雑談をする間柄になっていた。
しかし、不思議なことに琴葉は僕以外の人間には見えていないらしい。そういえば校内で琴葉を見た記憶が無いな、と思いながらも気にしていなかった僕に、琴葉は「私、都市伝説なんだよ。私が見えたら387日後の23時52分27秒に死んじゃう的な」と、やけに細かい数字を言って笑った。
僕には発言の信憑性など、どうでもよかった。彼女が人間だろうが都市伝説だろうが、放課後に談笑をして暇を潰す関係は変わらない。僕にとって琴葉は、思わせぶりな言い回しをするだけで、特に何も考えていない虚言癖を拗らせた女子なのである。
これは人間の僕と、都市伝説な彼女の日常――。