あらすじ

二歳の娘・莉央を突然亡くした母親。 もう一度「ママ」と呼ばれたい――。 その願いとは裏腹に、なかなか子どもには恵まれず、五年後、ようやく男の子・陽向を授かる。 莉央とは性別も、顔も、性格も違う。 それでいい。 この子は莉央の代わりではない。 そう自分に言い聞かせながら、母親は少しずつ喪失を受け入れていった。 陽向が二歳になった、ある日のこと。 街中で信号を待っていた彼女の耳に、小さな声が届く。 「……まま?」 振り返った先にいたのは、ベビーカーに乗った二歳ほどの女の子。 丸い頬。 笑ったとき、左の頬にできる小さなえくぼ。 ――莉央? もちろん、そんなはずはない。 女の子の名前は「紬」。 ちゃんと別の母親がいる、赤の他人の子どもだった。 それでも偶然の出会いを重ね、陽向と紬は幼なじみになっていく。 そして母親は気づき始める。 眠くなると左手を口元へ持っていく癖。 滑り台の上で一度立ち止まる仕草。 イチゴを食べる順番。 あまりにも、莉央と同じだった。 偶然。 全部、偶然。 そう思っていた。 ――この子を「莉央」に近づけていたのが、自分自身だったと気づくまでは。 娘を失った母親が、十五年かけてもう一人の「娘」を作り上げていく。 これは母の愛なのか。 それとも――執着なのか。

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小説を読もう2026/09/14
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