あらすじ
八樹伊織は、どこにでもいる普通の青年だった。
そんな彼の日常は、ある日突然現れた謎の《箱庭》によって大きく変わり始める。
そこは伊織だけが出入りできる小さな異空間。最初に存在していたのは、草地と泉、そしてわずかな管理ポイントだけだった。
畑を作り、作物を育て、家畜を飼う。最初は自分の生活を少し豊かにする程度の、小さな秘密基地になるはずだった。
しかし箱庭には、現実世界には存在しない植物、鉱石、素材、そして常識では説明できない資源が眠っていた。
その価値へ気づいた伊織は、軽い気持ちで世間へ売り出すことを避け、慎重に箱庭を調べ始める。
やがて、その存在を察知したのは日本政府だった。
「この資源は、どこで採れたものだ?」
身元照会、秘密交渉、限定された取引。そして伊織自身が表舞台へ出ることなく、箱庭由来の膨大な資源だけが少しずつ日本へ流れ始める。
これは、一人の青年が手に入れた小さな箱庭から始まり、家族三世代を通して二つの世界の未来へ繋がっていく物語。
世界を変えたいわけではなかった。
ただ、自分の大切なものを守りながら、少し便利に生きたかっただけだった。
――けれど、その小さな箱庭は、いつしか世界そのものを変えていく。