あらすじ
周りは推し活に勤しみ、どこへ行くにも推しのグッズを持ち歩いている。それを羨ましく思いながらも、自分が推せる人物を見つけられない高校生のナル。ある日、思いつきで自分の写真を写真アプリのAI機能を使って異性化してみると、そこには自分の理想そのものともいえる男性が現れた。ナルはさっそくその姿をグッズにして学校へ持っていくが、推し活をしている友人に「そのグッズは誰?」と尋ねられ、咄嗟に元地下アイドルで現在はフリーで活動している人物だと嘘をついてしまう。
自分の嘘を知られることを恐れたナルは、急いでその男性に「水沼仙一」という名前と経歴を与え、SNSアカウントを作り、架空のアイドルとして活動させ始める。AIで作った姿に自分の声や言葉を与え、グッズを販売し、SNSで発信するうちに、仙一はナルの想像だけの存在ではなく、少しずつ他人からも認知される「推し」になっていく。
最初は友人についた嘘を隠すためだけだったはずの活動。しかし、仙一の人気が高まるにつれて、ナルは自分だけが彼の本当の姿を知っているという優越感を抱くようになる。同時に、自分が生み出した仙一を他人が「自分の推し」として我が物顔で所有しようとすることに耐えられなくなっていく。
ナルは自分の生み出した推しを独占したくなり、自分と仙一との間に割って入ろうとしてくる友人を含めた「部外者」を排除しようとする。
それは次第にナルの社会との繋がりを希薄にしていくものとなって行き、ついに社会規範や倫理さえも踏み越えてしまおうとする。
自分が欲しかった「憧れの存在」を自分自身の手で生み出したナルは、その存在を手に入れたことで満たされるのか。それとも、自分の理想として作ったはずの存在に、自ら取り込まれてしまうのか。