あらすじ
ランクレイフォード子爵家とキリスガルド子爵家。
古くから親交のあった両家の話し合いによって、ヴィルとシリルはごく普通の政略結婚をした。
燃えるような恋があったわけではない。
けれど夫婦仲は円満で、早々に娘のリリアにも恵まれた。
それから数年。
外交官として皇帝の命を受けたヴィルは、隣国との難しい調整を見事に成功させ、その功績によって異例の若さで伯爵へと陞爵する。
これで何かが変わる――はずもなかった。
生真面目で仕事のできる夫。
知識豊富で観察眼に優れた妻。
元気いっぱいの三歳の娘。
相変わらず少しぎこちなく、それでも幸せなランクレイフォード家の日々。
ただし、ひとつだけ問題がある。
シリルは夫を愛している。
そしてヴィルも、自分が妻を愛していることはちゃんと自覚している。
なのにヴィルは――妻から愛されていることだけ、なぜか分かっていなかった。
「旦那様、私たち相思相愛ですよ?」
帝国の外交も、宮廷を巡る貴族たちの思惑も読み解く若き伯爵が、どうして妻の気持ちだけは読めないのか。
陞爵をきっかけに激しくなる宮廷の派閥争い。
皇族たちとの付き合い、外国との駆け引き、社交界に飛び交う噂と陰謀。
そんな面倒事を、夫は宮廷から、妻は社交界から――ときには二人並んで片づけながら。
結婚から始まった伯爵夫妻は、今さらゆっくりと「恋」を始める。
これは、すでに夫婦で、すでに家族で、たぶんとっくに相思相愛な二人の物語。