あらすじ
2026年抒情文芸春季号入選作 選者 直木賞作家 出久根達郎氏生。
中学1年で引っ越してきた天本は学校に知り合いがいない。部活も入らず図書委員会だけ入っている。母親は何としても進学校に進めさせたくて、勉強時間が無くなることを気にしている。第一志望に落ちた兄は事あるごとに天本に意地悪をしている。ある日天本のクラスの女子で不登校の吉村由香へ延滞本督促状を届けるよう担任に言われる。ネットで場所を確認したが、行ってみると古くて大きな農家だった。うろうろしているといきなり由香から声をかけられ中に上がるように言われる。由香は幼い弟の裕太と二人暮らしだった。翌日由香は登校していたがみんなから囲まれていて、人気のある子だと知った。由香から古い本は好きかと聞かれ、再び家に行くと本やら実験道具や天体望遠鏡もあった。由香の家は昔祖父が農家の跡取りになるために進学できなかったので、近所の子供たちのために開放していた場所らしい。お父さんを亡くし、今はお母さんがおばあさんの介護のために、そんなに遠くないがおばあちゃんちに泊まり込みでいると言う。由香はそのことをみんなに内緒にしてくれと話し、裕太もお母さんのことを話すと寂しがるから話題にしないでくれと頼まれる。ゴールデンウイークが近づいたある日、由香はみずがめ座流星群を一緒に見ようと誘って来た。それから数日後由香が学校に来ていない。由香の家を訪ねると誰もいない。家の前で戸惑っていると、由香と裕太がお母さんと車で来た。おばあちゃんをこちらで引き取る準備で休んだのだと言う。帰り際由香は天本に、最初に訪ねて来てくれた時嬉しかったと話す。強がっていても心細かったのだ。みずがめ座流星群を見る日、両親はその夜は親せきの家にお泊まりに出かけ、兄はさっさと遊びに出かけてしまった。由香の家に行くとおかあさんがおにぎりを用意していてくれ、裕太は起きていられず寝てしまったと言う。深夜由香と天本が河原に行くと、他にも流星群を観察に来ている人たちがいた。二人は大きな宇宙の前に人間の世の中は小さいものだと感じていた。そして二人の気持ちも思春期の男女のものになって行った。