あらすじ
月曜日から金曜日まで、パソコン操作と電話の応対に追われて働く二十六歳の会社員、小日向美桜(こひなたみお)。
恋愛には少し疲れてしまい、当分のあいだ彼氏はいらない――そんな彼女にとって、何より楽しみなのが日曜日だった。
平日はほとんど座りっぱなしの生活だから、その反動で休日になると美桜は街を歩き回る。商店街、公園、古い住宅街、駅前の路地――目的地を決めず、気の向くままに歩くのが彼女の習慣である。
そして、散歩の途中でふと立ち止まる。
「……あれ? これって、ちょっと不思議」
誰も気に留めないような、小さな違和感。毎週同じ場所にあるもの、なぜか一つだけ違うもの、誰がしているのかわからない習慣。美桜はそんな些細な「不思議」を見つけると、つい理由を知りたくなってしまう。
休日だけ趣味で大工仕事をするのが「日曜大工」なら、さしずめ自分は「日曜探偵」――美桜はそんな冗談めいた肩書きを自称している。
散策の途中で必ず立ち寄るのは、昔ながらの古い喫茶店「月影」。珈琲の香りと年季の入った家具に囲まれたこの店で、美桜は少しずつ店主や常連客たちと顔なじみになっていく。そして、何気ない会話の中から、街にまつわる奇妙な噂や小さな謎を耳にすることも――。
大事件も名探偵も登場しない。
それでも、いつもの街には、ちょっとだけ不思議なことが隠れている。
これは、そんな些細な謎を見つけては解き明かしていく、ひとりの「日曜探偵」のささやかな休日の記録なのである。