あらすじ
五十を過ぎて部長になっても、私はずっと他人の評価を気にして生きていた。
仕事では上司や部下の評価。
大好きなピアノでも、先生や観客の評価。
もっと上手くなりたい。
もっと認められたい。
仕事とピアノにすべてを注ぎ、疲れ果てて死んだ私は、異世界の孤児リディアとして生まれ変わった。
そして孤児院に贈られてきた一台のピアノをきっかけに、前世の記憶を取り戻す。
今度は子供の身体。
時間もある。
そして、一流の先生から基礎から学ぶこともできる。
――今度こそ、思う存分ピアノが弾ける!
やがて才能を開花させていくリディアのそばには、いつも一人の少年がいた。
演奏の感想を聞いても、返ってくる答えはいつも同じ。
「分からん」
音楽のことなど何も分からない彼に、どうして私は何度も感想を聞いてしまうのだろう。
そして大勢の観客から拍手を浴びた日。
私は気づく。
客席で探していたのは、たった一人だったことに。