あらすじ
飼育員を辞めた二十八歳の瀬尾灯里は、閉館した水族館の片づけに戻ってきた。午前零時、空っぽの大水槽に落ちてきたのは、銀の髪の青年。彼が咳き込むたび、胸から小さな光る魚がこぼれ落ちる。
「水を入れるな。こいつらが死ぬ」
青年の名はイサナ。異界の海を滅ぼしたとされる、呪われた王子だった。
必要なのは、彼を閉じ込める檻ではなく、魚たちが明日も生きられる海。予算なし、客なし、取り壊しまで三十日。灯里はもう一度、飼育日誌を開く。
夜ごと増える不思議な生きものと、不器用な王子との共同生活。けれど水槽が豊かになるほど、彼の身体は透けていく――。