あらすじ
1998年12月、バンコクで開催されたアジア大会で高橋尚子が歴史的快走を見せたその日。
熱狂の余韻が街を包みはじめる夕刻、語り手の携帯に、重夫の母親から突然の電話が入る。
母親は、沙織が語り手と会うことで明るくなったと礼を述べる一方、夫が「毎晩女と電話している」と愚痴をこぼす。
続いてかかってきた父親からの電話で、語り手はその“女”が自分であることを悟る。父親はただ、問屋仲間との麻雀帰りに車中で語り手と話していただけだった。
しかし母親の中では、夫の「女遊び」という物語がすでに完成しており、誰の言葉も届かないのだった。