あらすじ

「お姉様は金遣いが荒いから」——妹はそう言って、わたしの婚約者を取りました。父も母も頷きました。

十一年。わたしは月に一度、家の借金を返し続けていました。百三十二回。自分の名義で、自分の持参金で、誰にも言わずに。
家族はその出金を「長女の浪費」だと思っていたのです。

わかりました。では帳簿と鍵をお返しします。名義も一緒に。

三月後、オルグレン伯爵家は破綻しました。返済していたのがわたしだと、誰も知らなかったからです。

——けれど本当に恐ろしかったのは、そのあとでした。返済先の商会に足を運んだわたしに、若き会頭はこう言ったのです。
「その借用書、十一年前から一度も有効になっていません」と。

わたしが返し続けていた借金は、最初から存在しませんでした。

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アルファポリス
アルファポリス2026/09/12
  • 現在の作品百三十二回、黙って払いました。妹に婚約者を譲れと言われたので、鍵束を置いて出ます