あらすじ
異世界ショッピング
――プレッパーの俺、森の要塞で異世界通販を始めました
災害や世界情勢の悪化を想定し、長年にわたって備蓄とサバイバルの準備を続けてきた男・黒崎悠真。
周囲からは「心配性」「やりすぎ」と笑われながらも、悠真は人里離れた山奥に土地を購入し、複数のダミー拠点と地下通路、その中心に巨大な地下要塞を作り上げていた。
そこには食料、水、発電設備、医療用品、農業設備など、長期間外界から隔離されても生きていけるだけの備えが整っている。
そんなある日。
悠真の目の前に、突然見たことのない文字が浮かび上がった。
――ステータス。
――スキル。
――アイテムボックス。
そして、世界でただ一人の適合者となった悠真に与えられたのは、異世界と現代世界の商品を購入できる謎の能力。
その名は――異世界ショップ。
ショップには異世界の剣や魔法薬だけではなく、現代日本の食品や家電、車、医薬品、銃器まで並んでいた。
さらに、現代科学では存在しない魔道具や、遥かに進んだ文明の製品まで購入することができる。
しかも、初回特典として与えられたアイテムボックスには、百本ものエリクサーをはじめとする大量の回復薬、身体強化薬、スキル、武器、防具、生活用品、拠点設備などが詰め込まれていた。
最初は、自分の生活をより安全で快適にするためだけに使うつもりだった悠真。
しかし、エリクサーがあらゆる病気や怪我を治療できることを知り、その力を利用して資産家などの「大物」を治療することで、莫大な資金を手に入れられることに気づく。
得た金で土地を買い、設備を整え、異世界ショップから新たな商品を購入する。
現代では高価な物が安く手に入り、異世界の商品は現代では未知の価値を持つ。
やがて悠真は、異世界の商品を現代社会で販売し、現代の商品をショップ経由で異世界市場へ送り込むことで、巨大な利益を生み出していく。
しかし、悠真は金そのものに興味があるわけではない。
目的はただ一つ。
誰にも邪魔されず、安全で快適な生活を送ること。
そのために、森の要塞は少しずつ姿を変えていく。
最新鋭の発電設備。
完全自動化された農場。
魔法による浄水設備。
現代技術では不可能な防御結界。
異世界の素材で作られた建材。
そして、現代兵器と魔導兵器を組み合わせた防衛システム。
最初は「災害に備えた家」だった場所が、いつしか誰にも破壊できない巨大な要塞へと変貌していく。
だが、悠真が異世界ショップを使い続けるにつれて、世界には少しずつ異変が起こり始める。
未知の病気が治療される。
これまで存在しなかった素材が発見される。
従来の常識を覆す発電装置が作られる。
そして、一人の医師、一人の研究者、一人の大企業経営者との出会いをきっかけに、悠真の存在は少しずつ世間に知られていく。
それでも悠真は、自分が異世界ショップを使っていることだけは決して明かさない。
「特殊な技術です」
「企業秘密です」
そう言って秘密を守りながら、少しずつ事業を拡大していく。
やがて、悠真の会社は世界でも有数の企業へと成長していく。
医療、エネルギー、農業、建築、輸送、防災――。
異世界ショップから得られる技術は、あらゆる分野に革命を起こしていく。
しかし、その一方で悠真自身は森の要塞からほとんど出ない。
莫大な資産を持ち、世界を変える技術を手に入れても、
「今日は何を買おうかな」
「地下農場、もう一つ増やすか」
「この魔法冷蔵庫便利すぎるだろ」
と、自分の快適な生活を優先する。
そんな悠真のもとには、次第に様々な人間が訪れるようになる。
病気を治してほしい者。
新しい技術を求める企業。
悠真の正体を探る政府関係者。
彼の力を利用しようとする者。
そして、ただ悠真自身に興味を持って近づいてくる者。
悠真はそんな人々と関わりながら、自分だけが持つ異世界ショップの謎にも少しずつ迫っていく。
なぜ自分だけが選ばれたのか。
異世界ショップは誰が作ったのか。
なぜ現代の商品まで販売されているのか。
そして、ショップの商品にはなぜ「異世界」だけでは説明できない、遥かに進んだ文明の品まで存在するのか。
やがて悠真は、異世界ショップが単なる通販サイトではないことを知る。
それは――無数の世界で生み出された「可能性」そのものを商品として扱う、巨大なシステムだった。
それでも悠真は、世界を救う英雄になるつもりなどない。
王様になるつもりもない。
ましてや異世界へ旅立つつもりもない。
彼はただ、自分の森と家族、そして自分の大切な生活を守りたいだけだった。
だから今日も悠真は、世界を変えるほどの力を持った通販サイトを眺めながら、新商品を探す。
――さて、今日は何を買おうか。
これは、世界で唯一チート能力を手に入れたプレッパーが、異世界へ行くことなく、異世界の商品を使って現代日本で自由気ままに生きていく物語。
そしてその生活は、本人の知らないところで、少しずつ世界そのものを変えていく。