あらすじ
仕事帰りの男が、いつもの帰路で見つけた一軒のおでん屋。
赤提灯に誘われて暖簾を潜れば、待っていたのは愛想のよい女将と、熱々のおでん、そして美味い酒だった。
昆布、ちくわ。
出汁の染みたおでんを肴に酒を呑む。
ただそれだけの、ささやかで幸福な寄り道……のはずだった。
だが、男はふと気づく。
自分は、どこへ帰ろうとしていたのか。
妻は? 娘は?
そもそも、自分は誰なのか。
記憶を失った男。
決して口にしてはならない奇妙な果実。
闇の中に浮かぶ、一軒のおでん屋。
男がその果実へ手を伸ばしたとき、物語は思いもよらぬ方向へ転がり始めていく。
少し怖くて、少し可笑しい。
生と死の境を舞台にした、サービス・ホープの短編英雄譚。