あらすじ
毎日が楽しい。
友達と笑って、お弁当を食べて、放課後にはくだらない話をして――そんな、ごく普通の毎日。
それなのに、一六立揺里は、ときどき猛烈に息苦しくなる。
誰かにいじめられているわけでもない。
学校が嫌いなわけでもない。
友達だって大切だ。
それでも、自分だけが透明な箱の中に閉じ込められているような感覚から、どうしても逃れられなかった。
そんなある日、揺里は授業を抜け出して入った学校の図書室で、一冊の古い哲学書と出会う。
そこに書かれていたのは、自分の息苦しさを「悪いこと」だと決めつけるのではなく、別の角度から見つめ直すための言葉だった。
そして、その本をきっかけに、今まで存在すら認識していなかった同級生・千歳蓮と出会う。
教室では見えなかった誰か。
自分とは違う考え方を持つ誰か。
そして、自分の知らない場所に広がっている、もっと大きな世界。
マイやチカとの友情。
不器用ながらもまっすぐな伊織との関わり。
静かな図書室で言葉を交わす千歳との時間。
家族との何気ない会話。
人と関われば、嬉しいことだけでは終わらない。
誤解もするし、傷つくこともある。
誰かを傷つけたくなくて、ついた小さな嘘が自分自身を苦しめることもある。
それでも、誰かと出会うたび、揺里の世界には少しずつ新しい色が増えていく。
一人でいることは、寂しいことなのだろうか。
誰かと一緒にいることが、正しいことなのだろうか。
自分らしく生きるというのは、いったいどういうことなのだろうか。
答えは、まだ分からない。
ただ、揺里は少しずつ、自分の足で歩き始める。
日常の中で、自分の世界の輪郭を探していく、一人の少女の物語。