あらすじ
「……俺、なんか変ですか?」
六月の朝。いつもの通勤電車。
いつもの場所に立っていたその人は、雨の日だけ、向こう側が見えるほど透けていた。
社会人になってまだ二か月。
仕事にも、一人の生活にも慣れない二十三歳の俺は、名前も知らない彼と、雨の日の朝だけ言葉を交わすようになる。
会えるのは、通勤電車のわずか十数分。
仕事の愚痴をこぼしたり。
くだらないことで笑ったり。
少しだけ励ましてもらったり。
それだけの関係だったはずなのに。
いつしか俺は、晴れを待つのをやめていた。
――明日も、雨ならいいのに。
けれど梅雨は、いつか終わる。
そして彼には、俺の知らない「何か」がある。