あらすじ
人に紛れて暮らすあやかしたちの街には、人間には見えない保健所がある。 その食毒課に勤める柴咲澪(しばさき・れい)は、元薬剤師の「毒見官」。十年前、職場の賄いで毒を受けて味覚を失った。甘いも苦いも分からない舌に残ったのは、毒だけが痛いほど分かるという、使い道の限られた特技だった。 街で頻発する「呪い食い」――思い出の味を食べた人間が、幸せな顔のまま眠り続ける事件。澪は捜査の過程で、商店街の外れにある定食屋「まんぷく食堂」に辿り着く。店主の真昼(まひる)は正体不明のあやかしで、呪いの込められた料理を「美味しく調理して浄化する」という、これまた使い道の限られた特技の持ち主だった。 「毒は私が特定する。呪いはあんたが食え」 味の分からない毒見官と、何でも美味しくする料理人。食べることに不自由した者と、食べさせることしか取り柄のない者の、不揃いなふたりが、食卓にまつわる謎と人の業を、一膳ずつ片づけていく。