あらすじ
勇者に聖剣を、僧侶に加護を、そして彼らの死亡に――保険金を。
魔王討伐が国家事業と化したイルシオン王国では、冒険者の生死は「支払い実績」として管理されていた。王立冒険者保険局・損害査定課は、勇者の死を書類の上で「業務上の事故」と「持ち込みの過失」に仕分けする、王国いち縁起の悪い部署である。
そこに配属された元・宮廷薬房の検死薬師ヴェルニエ(二十九歳・喪主経験なし・毒舌)は、着任初日に百二十枚の死亡届の山を見て呟いた。 「半分、死に方がおかしいですね」
直属の上司は、あと三年で定年を迎えるだけの査定課長ギルバート(五十四歳・腰痛持ち・胃薬常用)。上からは「査定は済んだことにしろ」、現場からは「死人に口あり」と揉まれる日々の中で、二人は王国英雄の「心不全」という文字の裏に、毒の匂いを嗅ぎ取ってしまう。
これは、死んだ勇者をもう一度診る仕事の話である。