あらすじ

王宮から届いた依頼状に、六十九という数字があった。六十九回の失敗。十年をかけた、六十九回の受胎術の記録。辺境の術師・アメル・サードは、その数字の重さに一瞬息をのんだ。でも、依頼状の最後に王妃自身の署名があった。「あなたに頼みたい」。断れなかった。 王宮に着くと、宮廷術師長のガルドが「辺境の素人が何をしに来た」と言った。王妃ソリアは「六十九回目の施術の翌朝、またここに来てくれた術師は、あなただけです」と言った。この言葉の意味を、アメルはすぐに理解した——他の術師は、失敗したら去っていったのだ。 六十九回の施術記録を全部読んだ。そこで気づいた。どの施術も「卵だけを見て、環境を整えていなかった」。老化した卵は、完璧な施術技術だけでは孵化しない。卵を取り巻く環境全体を「卵に優しい状態」に整えることが、先に必要だった。 一ヶ月かけて、王妃の生活環境を変えた。食事、睡眠、温度、ストレス。レオン王が「宮廷会議での後継者問題の議題を三ヶ月凍結する」と発表した。その決断の大きさをアメルは知った。 七十回目の施術当日。三時間の施術。途中に危機があった。焦らず、丁寧に対応した。施術が終わり「あとは卵が答えを出す」と言った。三日間、待った。レオン王と夜の庭で話した。「諦めたくなかった。ただそれだけだ」という王の言葉を聞いた。 三日目の朝、王妃から呼ばれた。成功していた。宮廷に知らせが広がった。ガルドが初めてアメルに頭を下げた。王が礼を言おうとすると、アメルは「礼は王妃に言ってあげてください。十年間諦めなかった人に」と返した。 六ヶ月後、アメルは辺境に戻ろうとしていた。レオン王が「七十一回目のために、王宮に育成の場を」と言った。アメルが「七十一回目のために帰ります」と言った。ふたりの間に、術師と依頼人を超えた何かがあった。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/09/13
  • 現在の作品王妃の卵を、七十度目の奇跡で救え