あらすじ

王宮薬師の令嬢・イリス・ファウンに、「辺境の不老の村・グリュエン村の村長に嫁げ」という命令が来た。王宮が百年追い続けた「長寿の秘密」の解明のための政略だ。父が主導した縁組に怒りを感じながらも、「自分の目で不老の秘密を確かめる」という好奇心がイリスを動かした。 村に着いた瞬間、イリスは驚いた。村人が全員、実年齢より遥かに若く見える。そして、食堂で最初に出された料理が、想像を超えて美味しかった。 村長テオドールは無口で感情を見せなかった。「よろしく」という挨拶に「よろしくはしていない」と返した。でも、料理をしているときだけは別人のように丁寧で集中していた。 調査を始めたイリスは、村人の命炉が標準より強く安定していることを確認した。食材の分析を進め、山の深部にある「命草」の存在を知った。しかし調査が深まるにつれ、秘密が食材だけではないことが見えてきた。何を食べるかだけでなく、どこで、誰と、どんな気持ちで食べるか——それ全体が命炉に働きかけている。 村の祭り「命炉祭」で、全村人が集まって食事をする場面に立ち会ったとき、イリスは確信した。食べることは料理の摂取ではなく、命への祈りだ。そしてその祈りを、テオドールが百年の伝統として守り続けていた。 王宮から帰還命令が来た。テオドールが「行くのか」と問う。イリスは迷った。「お前が見つけたことを持ち帰れ。ただし命草の場所だけは書くな」というテオドールの言葉が、信頼の証だった。 イリスは王都に戻り、報告書を書き、父に手紙を書いた。三ヶ月後、もう一度村に戻った。テオドールが「夕食は用意してある」と言った。その一言に、全部が入っていた。

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小説を読もう2026/09/13
  • 現在の作品不老の村に嫁入りせよ、との命令が来た