あらすじ
「君の名前は?」
「名前なんて、俺にはねえよ」
すべてを持つ皇太子が、初めて自ら手を伸ばしたのは、名前すら奪われた少年だった。
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白磁と真鍮に覆われた天上界──高天原(たかまがはら)。
そこは中央演算アマテラスによって、生命も感情も管理された“完璧な楽園”。
次代の太陽として育てられた皇太子カケルは、何不自由ない暮らしを与えられながら、自分だけがどこか欠けているような感覚を抱いていた。
ある日、紙で切った指から流れた彼の血を、楽園は“異物”と判定する。
──なぜ、この世界は僕の血を拒絶する?
生まれて初めて抱いた疑念。
それはやがて、完璧だった世界に小さな亀裂を生んでいく。
一方、高天原の遥か下──廃棄物と泥に覆われた下層界では、一人の少年が死にかけていた。
すべてを奪われても、生きる意思だけは手放さなかった少年は、高天原への復讐を胸に泥の中を這い続けていた。
だが、彼がついに力尽きようとしたその瞬間。
絶対であるはずのアマテラスに、あり得ないシステムエラーが発生する。
何ひとつ自分で選んだことのない皇太子。
何ひとつ与えられず、自らの意思だけで生き抜いてきた少年。
本来なら出会うはずのなかった二人は、互いの孤独に触れ、やがて初めての「友」となっていく。
だが──完璧な秩序にとって、二人の絆こそが排除すべき“不具合(エラー)”だった。
友を守るため、カケルは初めて自らの意思で楽園に背く。
そして、その選択に呼応するかのように。
彼の内側で、アマテラスの演算さえ捉えられない異形の力が目覚め始める。
虚飾の楽園を壊すのは、“神の意思”か。
それとも──少年たち自身の“選択”か。
日本神話×スチームパンクで描く、二人の少年と「選択」を巡る神話SFファンタジー。