あらすじ
「お前の祈りなど、計算誤差にすぎない」
吹雪の舞う聖堂で、大司教にそう告げられ、婚約者だった演算騎士団長からも婚約を破棄された下級巫女アイリス。彼女は反論することなく、ただ一礼して聖域を去った。
しかし誰も知らなかった。地味で目立たない彼女こそが、十年間ずっと裏で都市の演算負荷を最適化し、冬が永遠に明けないよう〈氷結の聖域〉を支え続けていた真の管理者だったことを。
前世でサーバー監視室にこもっていた記憶を持つ彼女は、退任時の引き継ぎを――しなかった。都市の真の管理者権限〈根の鍵〉を抱えたまま、静かに雪の中へと消えていく。
「バックアップも取らずに、運用担当をクビにするなんて。正気?」
辿り着いた辺境の廃村で彼女を迎えたのは、人間嫌いと噂される強面の竜人ガルド。だが彼は、涙もろく寂しがりで過保護な、旧世代の管理者だった――。
追放された巫女が、自分を切り捨てた聖域に「正常な都市」を残さず持ち逃げする、痛快スローライフ・ファンタジー。そして訪れる、あたたかな雪解けの物語。なお、再起動のお願いは受け付けません。