あらすじ
「私にかけられた祝福を、買い取っていただけますか」
呪いの品も買い取る夜窓質店に、三か月も眠れていない女の人がやってきた。
彼女の正体は、街を守る聖女エルナ。
その指には、眠りを奪う「祝福」の指輪が嵌まっていた。
店主のリゼには、呪いが糸のように見える。
ほどいて、別の器へ移せば、厄介な呪いにも使い道はある。
まずは銀貨三枚で、今夜の眠りを。
そうして自分のベッドを貸した日から、リゼの暮らしに、ひとり分の寝息が増えた。
飴のおつりには戸惑うのに、帳簿の数字はすぐ覚える。
自分の疲れには鈍いくせに、こちらが食事を抜くと怒る。
誰もが知る聖女様は、二人きりになると、思いのほかよく笑う。
一緒に椅子を選び、本を貸し、次に来る日を約束する。
そのうちリゼは、彼女が訪れる前に髪を直し、好きそうなお菓子を取っておくようになっていた。
けれど、指輪の呪いは、街を守る仕組みの奥まで続いている。
彼女を眠らせることはできても、自由にするには、まだ足りない。
――この呪いが解けたら、あなたはもう、私の店に来なくなるのだろうか。
呪いをほどく質屋の娘と、自分の願いを探す聖女。
小さな店で、取引から始まる2人の物語。