あらすじ
現代日本から異世界へ迷い込んだ青年、リオ・ハルタ。
勇者でもなければ、剣の才能もない。
そんな彼が働いているのは、死者の部屋を片付け、残された品を遺族へ返す店――《残照堂》。
リオには、一つだけ奇妙な力がある。
《遺品鑑定》。
死者が強い感情を残した物に触れることで、その人物の記憶の断片を追体験する能力だ。
ただし、見える記憶が真実とは限らない。
人は勘違いする。
思い込む。
都合よく記憶する。
だからリオは、死者の記憶だけを信じない。
遺品を調べ、人に話を聞き、残された者たちの想いを辿っていく。
ある日、残照堂を訪れた一人の女性から、
「三日前に死んだ弟の部屋を片付けてほしい」
という依頼を受ける。
弟は魔物と勇敢に戦い、命を落とした――。
そう聞かされていた。
しかし部屋に残されていた一本の安物の剣には、戦った痕跡がほとんどなかった。
そして、その剣に残っていた記憶もまた、ギルドの記録とは食い違っていた。
小さな違和感。
一つの遺品。
一人の死者。
それらを片付けていくうちに、リオはやがて、この世界で二十年前に起きたという「勇者による魔王討伐」の歴史そのものに疑問を抱くことになる。
死者が遺したものを片付ける、異世界遺品整理ミステリー。