あらすじ
人を笑わせること。
それだけが、旅の道化師ハイルにとって何よりの誇りだった。
十八歳になり、師匠のもとを離れて一人旅を続けていたハイルは、芸術の都アルヴェリアで王宮公演という人生最大の舞台を手にする。
国王も、貴族も、彼の芸に笑う。
――けれど、その夜。
ハイルは初めて、心の底から「笑えない」と思う光景を目にする。
王宮を追われ、笑うことさえできなくなった彼の前に現れたのは、一人の謎めいた男。
男がハイルに与えたのは、人の目を、心を、そして世界さえ欺く力だった。
正義のためでもない。
世界を救うためでもない。
王が正しいとは限らない。
虐げられた者が正しいとも限らない。
なら、自分の目で見て選ぶしかない。
これは一人の道化師が、いくつもの国を騙し、救い、時にはひっくり返す――
本当の笑顔を探し、世界を旅する物語。