あらすじ
会社の慰労パーティーで、神谷システムの会長夫妻は、私の妹――水野美咲の手を親しげに握っていた。
「本当にきれいなお嬢さんね。拓海がしょっちゅうあなたの話をするのも分かるわ。いつか本当に家族になってくれたら、私たちも安心なんだけど」
五年間、社内では交際を隠してきた恋人の神谷拓海は、美咲を見ながら笑っただけだった。訂正することも、私のほうを見ることもなかった。
一方、三か月近く深夜まで働き続け、ASTERを企画書一枚の段階から会社最大のプロジェクトに育ててきた私は、会場の隅でスタッフを手伝っていた。開始直前にサービス担当者が一人抜け、運営が回らなくなったため、たまたま私がワインのボトルを預かっていただけだった。
それでも、拓海と美咲を囲んで社員たちが祝福している中に立っていると、私だけがこのパーティーとは何の関係もない人間のようだった。
しばらくして、私は社員用の休憩室で拓海を呼び止めた。