あらすじ
高校二年生の久我湊人には、同じ図書委員の羽鳥澪奈がいる。
普段は落ち着いている澪奈だが、大好きなアニメキャラクター・セレナの話になると途端に饒舌になる。
そんなセレナの誕生日は、九月十四日。
そして偶然にも、澪奈の誕生日も同じ日だった。
「羽鳥も同じ日だったよな」
何気なくそう言った湊人に、澪奈は驚いた顔をする。
「……覚えてたの?」
けれど、続けて返ってきたのは意外な言葉だった。
「私は、祝わなくていいから」
セレナの誕生日は誰より楽しそうに祝うのに、自分の誕生日だけは祝われたくないという澪奈。
その理由を知った湊人は、九月十四日、彼女と一緒にセレナの生誕祭へ向かう。
そして、推しの誕生日を祝い終えたあと。
「羽鳥のは、まだ」
湊人が用意していたのは、彼女が一度だけ口にした、小さな願いだった。
一回しか話していない誕生日も。
好きなケーキの味も。
ずっと言えなかった願いも。
彼は、ちゃんと覚えていた。
これは、誰かに「自分」として覚えていてほしかった少女と、そんな彼女の何気ない言葉を覚えていた少年の、誕生日から始まる恋の話。