あらすじ
人の感情や本質が「色」となって見えてしまう高校一年生の神島麗香。初日の失敗から始まった彼女の高校生活は、圧倒的な存在感を放つ豪快な「ライオン」野上光一、明るく無神経で奔放な桃色の色彩を纏う親友・鮎川沙織、そしてどこかキザで爽やかな「薄い金」の発色を持つ古河慎司の三人とともに賑やかに動き出す。
球技大会の狂騒、画材店で触れた謎めいた言葉、そして四人で向かった夏の由比ヶ浜。波音だけが響く夜、光一が語る「あの星の光は届くのに一万年かかる」という話を聞きながら、隣で慎司が「あのさ、俺」と言いかけ、彼の色がふとわずかに濃くなる。麗香はそれに気づきながら、話をそらして笑ってごまかしてしまう。一歩を踏み出す怖さが、いつも本音より先に立つのだ。
想いを言葉にできないまま迎えたある日、目の前で起きた暴力の記憶が、麗香から誰の色も見えない世界を奪ってしまう。慎司の色さえも。手元に残されたのは、笑っていない彼の横顔ばかりが並ぶ一冊のスケッチブックだった。
十三年の時を経て、潮風の吹く防波堤で娘が開いた古いページから、止まっていたあの夏の記憶と薄い金の感触が、静かに蘇り始める。