あらすじ
レグリエ王国の公爵令嬢セラフィーナ・アルディエールは、美しく、聡明で、慈善にも熱心な王太子の婚約者。
人々は彼女を「アルディエールの白薔薇」と呼んだ。
だが、隣国ノルディアから一人の公爵令嬢が訪れたことで、王都の空気は少しずつ変わり始める。
悪意の証拠はない。
罪を犯した事実もない。
それでも国家は、国境の安定と交易のためにセラフィーナを切り捨てることを選んだ。
そして、彼女を誰より理解しているはずの王太子アドリアンまで言う。
「君なら、国のために分かってくれる」
婚約は破棄。
王宮から排除。
そして国外退去。
隣国の令嬢エステルは望んだものをすべて手に入れ、王太子の隣へ立った。
完全な勝利だった。
ただ一つ、彼女たちは知らなかった。
追放した女が、本当に「善良な白薔薇」だったわけではないことを。
セラフィーナは人を読む。
市場を読む。
国家を読む。
そして一度構造を理解すれば、自分で手を汚す必要すらない。
命令しない。
脅迫しない。
可能なら嘘さえつかない。
ただ、相手が自分自身で選びたくなる道を用意する。
その選択の先が、破滅へ続いているだけ。
祖国にも、隣国にも戻るつもりはない。
追放先のグランデルで、白薔薇は静かに新しい盤を広げ始める。
王国で最も敵に回してはいけなかった女を、自分たちの意思で敵に回した者たちの物語。