あらすじ
結婚して半年。旦那様と一緒に朝食を食べたのは、たった四回。
王家の傍流に生まれたイレーヌは、宮廷の「気の利く代役」として使われる毎日に疲れていた。政略結婚した夫マティアスも、いつも誰かのために忙しい。
だから、夫の分の卵まで食べて、家を出た。
行き先は、亡き母の故郷の海。十日間だけ、自分の行きたいところへ行くつもりだった。
――なのに、旦那様が馬で追いかけてきた。
「私も行く」
「ついてこないでください」
宮廷では頼れる夫が、旅先ではパン一つ買うのにも困り、妻は歩く靴さえ間違える。別々の財布、閉まっていた宿、同じ寝台、初めて知るお互いの好み。
離婚をするための家出ではなかった。
けれど、夫と本当に恋をするための旅になるとは、思ってもみなかった。
不器用な夫婦が、互いを欲しがり、海へ辿り着き、帰ったあとの暮らしまで自分たちで選び直す異世界恋愛。約十万字・全三十話完結。