あらすじ
「うまくて食べちゃった」
夫の直樹はそう笑う。唐揚げを揚げた私の分が、一つも残っていなくても。
量を増やした。お皿も分けた。食べないでと、何度も頼んだ。
それでも夫は、幼い娘が最後に取っておいたハンバーグまで奪ってしまう。
「だって、パパが食べちゃうから」
熱い唐揚げを急いで頬張り、自分の皿を抱える娘。
その姿を見た私は、夫にも同じ思いをしてもらおうと、ある協力を頼むことにした。
望んでいたのは、家族三人で、ゆっくり夕食を食べること。
けれど、ようやく戻った穏やかな食卓は、私が打ち明けた秘密をきっかけに崩れていく。
夫が奪おうとするものは、やがて食事だけではなくなった。
自分の空腹を後回しにしてきた妻が、娘とともに、自分たちの暮らしを取り戻す物語。