あらすじ
「お前のような戦闘もできない裏方は不要だ。今日限りでパーティから追放する」
勇者アーノルドからそう告げられた時、俺――ハルトは静かに頷いた。
俺が持っていたのは、地味と蔑まれる【結界敷設】と【座標把握】の生産職スキル。
彼らは知らなかったのだ。俺が毎晩、ダンジョン内の龍脈を整備し、魔物の湧き時間を秒単位で制御(ダイヤ管理)し、補給物資を絶対に遅延させずに届けていたからこそ、安全に無双できていたという事実を。
「そうか。だが今日から、この迷宮の補給線はすべて止まるぞ?」
パーティを去った俺は、魔境の瘴気で孤立し、飢餓と破滅の危機に瀕していた極貧領地・アルカディアへと辿り着く。
そこで出会ったのは、民のために泥にまみれて戦う銀髪赤眼の没落皇女・アステリアだった。
「私にはもう、この民たちを救う道が残されていません……」
「なら、俺が道を敷こう。――絶対に遅れない、鉄の道を」
前世で過密ダイヤとインフラ網を支えた天才技術者だった俺は、放置されていた古代魔導ゴーレムを「魔導機関車」へと改造。大陸の龍脈を「線路」として定着させ、世界初の《魔導鉄道》を起動する!
片道3ヶ月かかる死の魔境を、わずか4時間で爆走走破。
朝採れの新鮮野菜、医療品、ドワーフの工具を爆速輸送し、ただのド田舎だった辺境領地は、瞬く間に大陸全土の富と英雄が集まる「世界最大の交通・経済ハブ」へと大化けしていく!
一方その頃――。
ハルトを失った勇者パーティは、魔物の異常発生と深刻な物資不足で深層で立ち往生していた。
「クソッ、なぜ魔物の湧く時間が予測できないんだ!? 補給物資はどうした!?」
「ハルト様がいらっしゃらないと、水すら届きません……!」
「戻れと言え! あいつが頭を下げて戻ってくるなら許してやる!」
……もう遅い。ハルトの引いた「完全運行ダイヤ」は、二度と彼らのためには動かない。
やがて元勇者は物乞いに堕ち、駅の「便所掃除員・保線員」として泥にまみれて更生することになるのだが――それはまた別の話。
「出発進行。これより当領地は――世界最速の定時運行を開始する」
これは、世界を裏から支えていた天才インフラ屋が、健気な美少女皇女と共に大陸の常識を覆し、やがて星そのものを救う「魔導帝国」を築き上げるまでの物語。