あらすじ
「荷物を軽くするだけの外れが、騎士になれると思ったか?」
運搬係のカイは、技能授与の日、未払の給金を求めただけで騎士団長に踏みつけられた。
前世は、仕事帰りに配信と科学解説動画を見るのが好きだった税理士。だからこそ、授かった技能の説明に、小さな違和感を覚えていた。
荷物が軽くなったのではない。
落ちる向きと強さが、変わっている。
団長の剣が地面から離れない。突撃した重装騎士たちが膝をつく。その後ろでは、住民が何事もなく歩いている。
『待て。なんで騎士だけ動けないんだ?』
生配信に流れる驚きの文字を横目に、カイは告げた。
「荷物持ちが必要なら、依頼書をどうぞ。今度は料金を頂きます」
独立して始めた運送救助店には、厄介な依頼と、彼を試す敵が次々にやって来る。軽装兵、重力対策装備、空中艦隊――対策する相手を、観察と検証でもう一歩上回る。
重さを減らしても、勢いは消えない。
真下に落とせないなら、横へ落とせばいい。
強いだけでは救えないなら、止め方まで考えればいい。
空を駆ける相棒と、画面の向こうの常連たち。温かい食事も、帰る家も、働いた分の報酬も、今度は自分の手で手に入れる。
これは、荷物持ちと呼ばれた男が、世界でいちばん頼りになる《重力支配》の使い手になる物語。