あらすじ
誕生日に好きなお菓子が残っていなくても、悲しむほうが悪いと言われた。
そんな第三王女オデットに、「何を食べたかったか、教えてください」と返事をくれた人がいる。
園芸誌を通じて三年間、手紙を交わしてきた「灰色の庭のおばあ様」。顔も本名も知らないけれど、愚痴も弱音も書ける、大切な味方だった。
政略結婚が決まったときにも、不安な気持ちを便りにした。
相手は北の公国の大公。笑わず、女性には手袋越しにしか触れない方だという。
せめて、嫁いだ後もお返事をいただけますように。
ところが、到着した館で大公が差し出したのは、見慣れた薄青い封筒だった。
――あなたが、待っていてくださったのですね。
花嫁として迎えてくれたのは、誰にも見せなかった自分を、すでに大切にしてくれていた人。
彼が用意した南向きの部屋には、オデットの鉢を置く場所が空けてあった。
手紙の願いを叶えようとして、菓子を十二種類も並べてしまう不器用な旦那様。昔の恋愛相談には、隠しきれなかった嫉妬まであったらしい。
けれど今は、喜んだ顔も、抱きしめてほしい夜も、便りにするより先に届けられる。
何でも話せた親友と、初めて恋人になる。
冷遇王女が、唯一の味方だった人に妻として愛されていく、甘くて少し可笑しい政略結婚の恋物語。