あらすじ
本名、ハーラル・インゴルブ。通称「ハイン」。
帝国軍に所属する上級魔導士――だった。
帝国に突如として出現した未知のダンジョンを、軍の命令で探索していたハインは、そこで意識を失う。
目を覚ました彼が横たわっていたのは、見覚えのない石造りの狭い部屋だった。
「……どこだ、ここは?」
何かの神殿か、それとも祠か。
訝しみながらも、ハインは魔導士として、そして軍人としての習慣に従い、周囲を慎重に調べる。
やがて扉を見つけ、その先へ進む。
そして、ようやく外へ出たハインの眼前に広がっていたのは――
故郷の帝国とは、どこか趣の異なる世界だった。
魔導士として培った「勘」が告げている。
『これは……飛ばされたな』
見知らぬ土地。
見知らぬ文明。
そして、帰る手段もない。
ハインは、すぐに目についた街道らしき踏み固められた道をたどり、歩き始める。
『ハイン、お前、やらかしたな……』
『……ここ、どこだ?』
自責と自問を繰り返しながら。
やがて彼の前に、一つの街が姿を現す。
そこは――クルプ。
「始まりの冒険者の街」と呼ばれる、異世界の街だった。
帰還の手掛かりを求めるハインは、そこで冒険者となる。
これは、故郷へ帰ることを願う一人の元帝国軍人が、異世界で「魔術師」として生きていく物語。
そして彼はまだ知らない。
この世界には、自分の過去を知る者がいることを――。