あらすじ
八月三十一日、午後十一時四十七分。
病室のベッドの上で、幼馴染の栞が息を引き取る。
心電図のフラット音が響き、世界が暗転すると――気づけば、蝉時雨の降る八月一日の朝に戻っている。
事故を防いでも、遠くの病院を探しても、何十回繰り返しても彼女は死ぬ。
そして息絶える直前、彼女は必ず同じ言葉を遺すのだ。
「私……蓮くんを、呪っちゃった」
十八回目の夏、蓮は彼女の自宅で一枚の書類を見つける。
それは、栞自身が署名した『延命治療拒否の事前指示書』だった。
意識を失う過酷な治療を拒み、痛みを薬でねじ伏せ、蓮の前で笑っていられる最後の夏を自分で選び取っていた栞。
そして蓮は気づく。
時間を巻き戻していたのは、自分の絶望を見た栞の「蓮くんの人生を壊してしまった」という後悔だったと。
運命を変えることはできない。
けれど、彼女が命懸けで選んだ時間を、僕が肯定することはできる。
「笑えなくても、弱くてもいい。採点なんて、もうしなくていい」
二人で向かう、夜の海。
二度と巻き戻らない、十九回目の最後の夏休みが始まる。