あらすじ
十五歳の少年エリックが神殿で授かったスキルは【記録】だった。
剣を振れるわけでもない。
魔法が使えるわけでもない。
身体能力が上がるわけでもない。
ただ、見たものや聞いたことを記録できるだけ。
紙に書けば済む程度の能力。
わざわざスキルにする価値すらない。
「……これが、僕のスキル?」
人付き合いが苦手で、目立つことを嫌うエリックは、自分には何の才能もないのだと諦める。
できるだけ人と関わらず、静かに生きていこう。
そう思っていた。
だがある日、エリックは自分の【記録】に残された内容と、世界で語られている「事実」が食い違っていることに気づく。
存在していたはずの村。
誰も覚えていない人間。
歴史から消えた出来事。
────おかしい。
ただ記録するだけの、無価値なスキル。
そのはずだった。
【記録】を調べるほど、エリックはこの世界そのものに違和感を抱き始める。
そしてやがて知ることになる。
自分のスキルは、世界から消されたものさえ残しているのだと。
これは、自分を「使えない人間」だと思っていた少年が、世界の真実を記録しながら、少しずつ誰かに頼られる存在となり、やがて自分自身の価値を見つけていく物語。