あらすじ
十数秒で湯が沸く魔導具が、平民に手が届く値段で。下町で奪い合いになったそのポットは、ほんの少し前まで倉庫に積まれた「鉄くず」だった。
疫病が去った王都。特需を読み違えて大損を出した名門レミントン商会は、その責任を次男クロードに押し付けて追放した。手切れ金代わりに渡されたのは、売れ残りの防疫温風機三百五十台と、運河沿いの古びた乾燥倉庫。
「ギルバートのやつ、不良在庫を押し付けたつもりで今頃ふんぞり返ってんだろうな」
だがクロードは知っている。もはや使い道のない、高価なだけの魔導具も、バラせば中身は一級品の部品だ。
行き倒れていた天才術式士エレナを飯で口説き落とし、仕事を失っていた頑固なドワーフの鍛冶師バルガスを迎えて、ガラクタの山は湯沸かしポットに生まれ変わる。共同購入に分割払い、下取りまで。庶民の懐に合わせたクロードの商いに、長屋の注文が殺到していく。
安物の模倣品、商会と癒着した役人、資材の買い占め。
実家が繰り出す数々の妨害にも屈しないクロードの一手は、やがて王都の暮らしそのものを塗り替えていく。
疫病明けの王都で、捨てられた魔導具から人々の暮らしを作り直す、工房経営×ものづくり成り上がりファンタジー。