あらすじ
13歳の夏。ロックバンドの重厚な音に人生を狂わされた山谷真太郎は、安物のギターとエフェクターを手に、狂ったように「音作り」に没頭していた。
だが、中3の文化祭で彼は絶望を知る。
圧倒的な才能を持つ同級生が放つ、無神経で暴力的な爆音。
真太郎が数ヶ月かけて緻密に作り上げた最高の音は、天才の放つ濁流に飲み込まれ、誰の耳にも届かなかったのだ。
「アイツみたいに何も考えず、ただデカい音を垂れ流す連中にな。そいつらの音を全部、お前の手で『檻』にぶち込んでやれ」
敗北に泣き叫ぶ真太郎に、プロギタリストの叔父が授けたもの。
それは、ギターの速弾きでも、才能でもなかった。
帯域の棲み分け、残響の計算、PAを通した空間のコントロール。
――音楽を物理と理論で支配する『音響』という名の戦い方だった。
目立ちたがりのエゴイストが鳴らす騒音は、音響理論で檻に閉じ込め、完膚なきまでにねじ伏せる。
眩しすぎる天才の光を、裏方の影が黒く塗りつぶす。
これは、才能を持たない「裏方の少年」が、泥臭い知識と執念を武器に、傲慢な天才たちに極悪な下剋上を果たす――『月食(エクリプス)』の物語。
※こちらの作品はカクヨムにも投稿しています。