あらすじ
19世紀パリ、ガラス屋根のパサージュ(商店街)。
そこにある小さなオルゴール工房に、日本の着物に大きなコートを羽織った13歳の少女・琴音(ことね)がやってくる。
早くに両親を亡くし、裕福な親戚の家で「お箱入りのお嬢様」として育った彼女が、すべてを捨てて単身海を渡った理由――それは、天才職人としてパリへ渡ったまま消息を絶った大好きな兄・奏太(そうた)を探すため。
けれど、兄の工房にいたのは、兄が残した未完成のオルゴールと、一癖も二癖もある二人の青年職人で……?
「君の歩く音は軽い。……邪魔しないなら、好きにすれば」
音の振動にしか興味がない、ローテンションな精密機械オタクのルシアン(22)。
「お箱入りのお嬢ちゃんが来るところじゃねえ! 怪我したらどうすんだ!」
口は悪いが過保護で面倒見が良すぎる、熱血木工職人のガブリエル(25)。
技能ゼロ、道具も握ったことがない琴音。
最初は「お嬢様の気まぐれ」と思われていたものの、兄のオルゴールを自分の手で完成させるため、手が傷だらけになっても泥臭く食らいつく彼女の健気さに、頑固な職人たちの心が少しずつ解きほぐされていく――。
「……たく、背が足りねぇなら先に言えよ」とガブリエルが木端で踏み台を作ってくれたり。
「今日のきみの音は、少し寂しそうだ」とルシアンが静かに温かいお茶を淹れてくれたり。
言葉は不器用だけど、誰よりも温かい。
無骨な男たちの工房で愛される、13歳少女の手仕事と成長の物語。
この作品はただの異国情緒ライトノベルではありません。
社会が複雑になりすぎて、幸せな未来や本質が見えにくくなった……そんな私たちの心が救われるための“音の物語”です。