あらすじ
中学三年間、誰よりも好きだったバスケットボールに打ち込んだ。
けれど、欲しかった結果は残らなかった。
高校ではもう、部活に本気になるつもりはなかった。
そんな黒瀬湊が、体育の1500メートルで出したタイムは――4分26秒。
陸上経験なし。
走ることは嫌い。
それでも誘われるまま陸上部を訪れ、短距離の西野、一ノ瀬先輩、変わり者の部員たちと出会い、気づけば入部届を出していた。
走るのは、相変わらず嫌いだった。
なのにタイムが縮まれば嬉しい。
抜かれれば腹が立つ。
勝てば、もっと勝ちたくなる。
好きだったバスケでは残せなかった結果が、好きでもない陸上では残っていく。
そして湊の高校生活には、数字にならないものも増えていく。
雨の日に部室でやったUNO。
昼休みの焼きそばパン。
テスト前の図書室。
放課後のコンビニ。
映画館。
文化祭。
恋。
くだらない喧嘩。
誰かが選ばれ、誰かが選ばれない大会。
そして、いつか来る引退と卒業。
好きなこと。
得意なこと。
結果を残せること。
それらは、必ずしも同じではない。
これは、陸上で全国を目指す少年の物語ではない。
二十七人の陸上部員と、その周りにいた高校生たちが過ごす、三年間の物語。
記録に残る一秒と、
どこにも記録されない時間の物語。